top of page
  • 執筆者の写真sanyukai

読売新道 2015.8.17-19


朝6時の扇沢は雨がしっかり降っていた、天気予報通りだった。

天気予報によると、明日からは回復するはずなので

今日は雨の中とりあえず奥黒部ヒュッテまでは行こうと覚悟してきた。

実は黒部ダムも初めてなので、ダムに行くのも楽しみ、

黒部湖の湖畔を歩くだけでも満足出来る気がしていた。

黒部アルペンライン、扇沢からトロリーバスに乗った。

なるほど、トロリーバスとはこんな感じなのね、うんうん、

完全に観光客向けなので始発は7時過ぎだ、この時間がもったいないなあ。

トロリーバスも破砕帯を通りゆっくりゆっくり進む、やっと黒部ダムに着いてもトンネルの中をぐるりと歩く感じ。まあ、それも観光客なら楽しいのだろう、黒部ダムにやっと着いた、ここではしばらく観光客気分で昭和の大事業の黒部ダムを楽しんだ。

観光放水もしてくれていたのでその迫力に満足。

「やっぱりここからだよね。」なんかよくわからないけど、

ひとりで黒部ダムに初めて来れた事に大満足した。

また黒部ダムから始まる山旅を計画しようとひとり心に誓った。

ロッジくろよんまでは散策路という感じの道だったが、

そこから先はいよいよ登山道が始まった。

ガイドブックに書いてあった通り、

湖畔の索道につけられた梯子はアップダウンを繰り返した。

作った人の苦労を思うと頭が下がる、梯子を登ったり下ったりは大変だが、標高が上がる訳ではないのでそれほど凄い登山道という感想は私はもたなかったのだが、奥黒部ヒュッテからの登山者とすれ違い話をしたら、彼はこんな大変な登山道は初めてで凄いという感想を

口にしていた。

経験や体力などで人の感じ方はいろいろなのだなと思った。

中の谷から黒部湖に流れる水が広い河原を作っていて、

湖畔を歩いていたのに河原に出たなあと思ったらそこからひと踏ん張りだった。

今年作られた真新しい梯子の索道も凄い所に付けられていた。

渡し船の時間まで30分ほどあったので平の小屋で休んだが、

この時点でカッパの下の服はびしょ濡れ、止まると寒くなってくる。

この旅の楽しみの1つの平の渡しは船長さんが怪我の為に欠航。

代わりに7人乗りのモーターボートに乗せてもらい出発した、

船が小さいぶん、黒部湖の水面が手を伸ばせばすぐそこにあった。

本当に湖の上をボートで渡った。

奥黒部ヒュッテはそれまで歩いていたアップダウンを繰り返す梯子がなくなり、

静かな樹林の散歩道の様な登山道に変わると直ぐ現れた。

小屋の近くのテント場も砂地の明るい広場で感じいい。

今回は悩んだ結果、読売新道を甘くみてはいけないだろうと、2泊とも小屋どまりにした。

北アルプスも色々歩いているが、キレット小屋、5月の蝶が岳山荘、奥黒部ヒュッテは3つめの小屋泊まりになる、ここはお風呂があるという

、びしょ濡れの今回はとてもありがたかった。

食事もボリュームがあったし、管理人の人達もとてもフレンドリーで

この日泊まった登山者のひとりひとりの行き先、翌日の出発時間を気にしてくれた。

考えてみれば、ここは上の廊下の出発基地だ、毎年何人かの命が失われている、

そんな現場に向きあっているという、無関心や無責任ではいられないんだと思う。

今年もお盆に単独で上の廊下に入った男性が高巻き中に落ちて即死だったそうだ。

過去には京都大の医学部の学生が亡くなり、

その親御さんに「なんで止めてくれなかったんだ。」と胸ぐら掴まれたといっていた。

漫画の「岳」にそんなシーンがあったなあ、と思いながら聞いていた。

この日の泊まり客は4組、雨の中読売新道を下って来た若いアベックと単独の男性。

明日登るのは私と単独の男性。

しかし、カッパを着て読売新道を登るのは嫌だったし、

景色が見えないならまたの機会に再度来ようと思っていたので、

朝雨が上がっていれば登り、降っていればのんびり下山と決めた。

下って来た人の話しだと読売新道は木の根っこが凄いという、

登山地図にも同じ事が書いてあり、それが雨で凄く滑ったらしい、

皆が口を揃える「木の根っこ」ってどんなのだろうと少し楽しみにした。

夜中に目を醒ますと雨の音がしていたが、

明け方4時に起きると外は静かになっていて、

樹林の間から星が見えていた。

「しょうがない、決めたのだから、行くか!」

昨晩のうちに用意してもらったお弁当を食べて、少し明るくなった5時に出発した。

長い長い読売新道の始まりだと思った。

確かに根っこが凄い、水晶岳まで長かった。

でも、きっと、下るより根っこは登りのほうが歩きやすかったと思う。

標高が上がっていくと360度見渡す限り山、山、山!

山のど真ん中にいる、昨日渡った黒部湖が遠くに見えた、

北アルプスのど真ん中を歩いている充実感、私の前後に誰もいない。

こんな所に来ちゃった、ひとりじめだ!

赤牛岳に着いた時はちょっとガスって来て気温も下がってきたので先を急いだ。

こんなところで雨なんか御免だ。

温泉沢の頭までは荷物も軽いので快調だった。

雲の平もよく見えて、こんな3000M級の山の中にあんな台地の様な場所があるのが

不思議に思えたし、雲の平へ行きたくなった。

ここから水晶岳までの間本当によく雲の平が見えた。

水晶岳山頂での記念写真には青空も見える、午後のほうが天気がよくなった、

明日も天気がいいかなと期待した。

水晶小屋には2時半くらいに着いた。

二人で1つの布団。

三俣山荘まで歩こうかとも考えたが、明日は湯俣温泉に下りて帰らないといけない、

湯俣温泉から高瀬ダムの林道歩きを考えたら大人しく水晶小屋泊まりで我慢した。

でも、たぶん、二度と水晶小屋には泊まらない。

水晶小屋を否定するつもりはない、前回の建築中のヘリの悲惨な事故を乗り越え、

この場で頑張っている小屋の経営者には敬意を惜しまない。

ここに小屋があるからと安易にこの小屋泊まりの計画を立てる登山者には

一考してもらいたい。

北アルプスの他の営業小屋と同じように考えてはいけないと私は思う。

定員30人の小さな小屋がここに建っている意味を

この山域の歴史や気象条件を考えて慎んで利用を考えてもらいたいと思った。

うーん、そうしたら、やっぱり、私も三俣山荘まで歩くべきだったと反省した。

さて、最終日、やっとこの日槍ヶ岳が見えた。

見えたと思ったら南真砂岳から樹林に入るまで名残惜しそうにずっと私を見守っていてくれた。

北鎌尾根も凄い迫力で迫ってきた。

いつかあそこを歩きたい、さてどうやってそれを実現させるか、ちょっと悩んでいます。

竹村新道も凄い急坂でした、さすがの私もこの登山道は登る気がしません。

下りに使ってよかったです。

湯俣温泉はちょっと気になっていたので行ってよかったです。

ネットに出ていた黒ラーメンを食べたくて急坂を下ったのですが、

今年は黒ラーメンではなく瀬戸内の塩を使った白ラーメンだそうです。

昼には少し早かったのでまだ準備が出来ていなかったので食べずにおりました、残念です。

さて最後のお楽しみの高瀬ダムまでの林道歩きです。

コースタイムで3時間あります。

登山地図で気になっていたコースです、高瀬川沿いのハイキングという感じの明るい道、

悪くなかったです、ダムに出てからは舗装道路です、

トンネルを3つ抜けると終点の高瀬ダムです。

1つ目のダムを抜けると2つ目のダムが遠かった。

最後のダムは2キロ位ある長い長いダムでした、

涼しくていいのですが最後の最後まで長い長い歩きでした。

考えてみると黒部ダムで始まり高瀬ダムで終わるダム、ダムの山旅でした。

黒部湖畔にかけられている梯子。毎年雪で70%ダメになりシーズン前に

かけ直すそうですが、

今年は全て全滅だったそうです。この梯子はかけ直されていて、梯子の先は登山道です。

さて、どこをどう歩いたでしょう?でも、実際は歩けるもんですよ。


閲覧数:3回0件のコメント
bottom of page