• sanyukai

谷川岳 一ノ倉沢南稜


かつての長谷川恒男や森田勝などの自叙伝や小説に、必ずと言っていいほど出て来て、数々の一流クライマー達を虜にしてきた谷川岳一ノ倉沢。小説の中のフィールドに自分の身を置けた事が夢の様な感覚だった。

昨年の12月にG藤さんから、「頑張れば日帰りも可能だ」という事を聞き、それならば行きたいと思ってそこへ向けて1月から岩トレに励んだ。春先の沢も多少我慢して、とにかくロープワークと登攀を練習した。

今回の総合的なリーダーは「形だけリーダー」の私で、コースリーダーは何回も一ノ倉へ行っているG藤さんにお願いした。G藤さんのチーム編成によりMさんと私がペア。G藤さん、N倉さん、Sちゃんのトリオパーティの編成で登攀した。私達2人となると「つるべ」で登攀していく事になる。緊張もするが楽しみも大きかった。

1ピッチ目は私がリードする事になって、練習通りロープをクリップしていく。「よし!順調だ・・」そう思って1ピッチ目の核心部であろう、最初少し被り気味のチムニーに差し掛かった。4級との事だが結構難しい。トップロープとは違うのでかなり慎重になり、右往左往してからチムニー直登を決め、チムニー内で1個目のクリップをしてから次の手は身長の半分位上の残置を掴めば何とか越せそうだった。グーっと身体と手を伸ばしてあと5センチで残置スリングに手が届く・・・。




そこでなんと!足が外れて落ちた!

チムニー直下は傾斜が少しあるテラス状になっていて、そこのテラス状の岩にズドーンとお尻から落ちた。後は傾斜のついたテラスの上をゴロゴロゴロ~!回転してなかなか止まらない。ヘルメットの部分を岩に打ち付けた感覚がわかり、大して痛くないと思っていた矢先にオデコに衝撃を感じた。「痛ってぇ~~~!!」と目の奥に星が散る中で転がっていると眼下に烏帽子スラブが見えて来て、「ああ、あそこに落ちて打ち付けられたら私、確実に死ぬな・・・1ピッチ目で早くも死ぬのか~?」と思っていた所で・・「と、と、止まったぁ~~。」3〜4mは落ちただろうか。起き上がって痛むオデコを触ると大きなタンコブができている。どうやら出血はしていない様だった。

南稜テラスでビレイしているMさんが心配そうに見ている。(止めてくれてありがとう)何故こんなに落ちたかというと、チムニー内で取ったランニングのヌンチャクを120cmシュリンゲのアルパインヌンチャクで取ってしまった為に結構落ちたのだと思う。チムニーが割と難しく感じて右に逃げるかもしれないと思い、長めのヌンチャクで取っていたのだ。チムニー直登を決めた時に短いヌンチャクに変えればこんなには落なかったかもしれない。

私の判断ミスだったと思う。とにかく、リード者は何が何でも難所を越え先へ進まねばならないので、気持ちを切り替えて再度チムニーに取り付く。次は何とか無事に越えて1ピッチ目終了。私が苦労したチムニーをセカンドのMさんは難なく越えてきた。さすが、関西で鍛えてるだけある。そして次のちょっとしたアクシデントは確か5ピッチ目のリードの時。ここは出だしが磨かれたスラブ状の岩で所々濡れている。眼下に見える滝沢本谷が所々に雪渓を残し、その間を雪解けの水が轟々と音をたてて白いしぶきを上げている。吸い込まれそうな美しさが怖いくらいだ。

1ピン目のクリップが早く欲しい所だが、ハーケンが見当たらないので濡れたスラブを騙しだまし登っていたその時、ツルッ!!と滑ってしまった。(本谷の藻屑となるのか?!)しかし、とっさにお尻を岩に押し付け滑り台を滑る様な体勢を取り服のフリクションを効かせたら自然に止まった。私が滑っている最中、焦りまくってロープをさばいているMさんの姿が今でも目に焼きついている。今日のパートナーにはさぞかしヒヤヒヤさせらているだろうと思うと可哀想だと思う気持ちと、そんな自分の力量の低さに辟易したが、落ち込んでいる暇は無い。気を取り直し濡れたスラブは回避してすぐにリッジに上がる事にした。ここのリッジは右側がスッパリ切れ落ちていて高感度と眺めが抜群。所々に浮石もあるが、ホールドは豊富。何とか無事に5ピッチ目終了。最終ピッチの最後がここの核心部。そこはさすがのMさんが見事にクリアーして私はセカンドで楽しく登らせていただいた。

こうして、登攀は何とか・・・何とか無事に・・・(?!)終了したが、なんといっても今回の一番の疲労感の元は下山。夕方になって雨も降ってきて下山の時のテールリッジが登りより滑るので怖々と降りるハメになった。時間もかかってしまい、ヘロヘロになって一ノ倉沢出合いに着いた時には既に薄暗かったが本当に嬉しかった。あまりの嬉しさに、自然とメンバー全員と固く握手を交わしていた。真っ暗になった林道をヘッデンを点けてロープウェイ駅に向かって歩く。前夜仮眠時間1時間。行動時間16時間。眠気と疲労でヘロヘロの中、N倉さんに「今日の山行なら{火曜山想会 1日を遊び尽くす}に匹敵するレベルになれました~?」と聞くと「まあ、昔はこれが普通だからな~」とのお返事に、益々自分はゴミみたいなレベルだと思い知らされたが、何故か清々しい気持ちにもなれた良い山行だった。

谷川ロープウェイ駅4:00----南稜テラス7:10/7:50---最終ピッチ終了点12:20---

---南稜テラス16:00---出合い19:00/19:20---谷川ロープウェイ駅20:10着


​東京近郊の平日(ウィークデー)主に火曜日を中心に活動する山岳会です。
ハイキング、クライミング、バックカントリー、沢登り、など四季折々の山を楽しんでいます。
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